はじめて従業員を雇うとき、多くの会社が迷いやすいのが「どの保険に、いつ、どの手続きが必要なのか」という点です。

労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険。名前は聞いたことがあっても、それぞれの役割や加入の考え方は少しずつ違います。

採用が決まってから慌てて確認すると、届出の準備が遅れたり、加入が必要な保険を見落としたりすることがあります。この記事では、はじめて人を雇う会社が採用前に確認しておきたい保険手続きの基本を整理します。

ポイント

「パートだから不要」「短時間だから関係ない」と決めつけず、働き方ごとに労災保険、雇用保険、社会保険の対象になるか確認することが大切です。

1. まず「労働保険」と「社会保険」を分けて考える

従業員を雇うときに確認する保険は、大きく分けると労働保険と社会保険があります。

労働保険とは、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。労災保険は、仕事中や通勤中のけが・病気などに備える制度です。雇用保険は、失業や育児休業、介護休業などに関係する制度です。

一方、社会保険は、一般的に健康保険と厚生年金保険を指します。病気やけが、出産、老後の年金などに関わる制度です。

それぞれ提出先や手続きの考え方が違うため、最初に「労災保険」「雇用保険」「健康保険・厚生年金保険」に分けて確認すると整理しやすくなります。

2. 労災保険は、従業員を1人でも雇うと確認が必要

労災保険は、原則として従業員を1人でも使用する事業に適用されます。正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの名称にかかわらず、労働者として働く人がいる場合は確認が必要です。

はじめて従業員を雇う場合は、労働保険の保険関係成立届や概算保険料申告書など、事業所としての成立手続きが必要になることがあります。

労災保険は、従業員本人が希望するかどうかで加入を決めるものではありません。会社として、雇用を始めるタイミングで手続きを確認しておきましょう。

3. 雇用保険は、働く時間と雇用見込みを確認する

雇用保険は、すべての従業員が一律に加入するわけではありません。主に、週の所定労働時間や雇用される見込み期間などを確認します。

一般的には、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みがある場合は、雇用保険の対象になるか確認が必要です。

対象となる従業員を雇った場合は、雇用保険被保険者資格取得届などをハローワークへ提出します。

「試用期間中だから」「アルバイトだから」という理由だけで対象外になるとは限りません。契約内容と実際の働き方を見て判断することが大切です。

なお、法改正により、2028年10月からは週の所定労働時間が10時間以上に適用範囲が拡大される予定です。短時間のパート・アルバイトを雇う場合も、今後は雇用保険の加入対象になる可能性があるため、早めに把握しておくと安心です。

4. 社会保険は、会社の形態と働き方を確認する

健康保険・厚生年金保険は、まず会社が適用事業所に該当するかを確認します。法人の場合は、代表者1人の会社であっても社会保険の適用を検討する必要があります。

従業員を雇う場合は、その人の労働時間や労働日数、雇用期間、賃金などを確認し、健康保険・厚生年金保険の被保険者になるか判断します。

フルタイムに近い働き方だけでなく、一定の要件を満たす短時間労働者も社会保険の対象になる場合があります。制度は段階的に見直されているため、採用前に最新の要件を確認しておくと安心です。

採用前チェック

  • 雇用形態と契約期間を決めた
  • 週の所定労働時間を確認した
  • 労災保険の成立手続きが必要か確認した
  • 雇用保険の加入対象になるか確認した
  • 健康保険・厚生年金保険の対象になるか確認した
  • 給与計算に必要な控除項目を確認した

5. 手続きの前に集めておきたい情報

保険手続きをスムーズに進めるには、採用前後で必要な情報を整理しておくことが大切です。

たとえば、従業員の氏名、生年月日、住所、マイナンバー、基礎年金番号、雇用保険被保険者番号、扶養家族の有無などが関係することがあります。

また、雇用契約書や労働条件通知書、賃金台帳、出勤簿、労働者名簿など、会社側で整えておく書類もあります。

採用後にバタバタしないよう、入社手続きのチェックリストを作っておくと安心です。

6. 手続き漏れを防ぐには、採用前に流れを決めておく

はじめての雇用では、「採用が決まったら何をするか」を先に決めておくことが重要です。

労働条件を決める、雇用契約書を作る、保険の加入要否を確認する、必要書類を集める、届出を行う、給与計算に反映する。ここまでを一つの流れとして整えておくと、手続き漏れを防ぎやすくなります。

特に小さな会社では、最初の1人目の入社手続きが、その後の採用ルールの土台になります。最初にきちんと整えておくことで、2人目、3人目の採用も進めやすくなります。

まとめ

はじめて従業員を雇うときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

  1. 労働条件を決める
  2. 労災保険の成立手続きが必要か確認する
  3. 雇用保険の対象になるか確認する
  4. 健康保険・厚生年金保険の対象になるか確認する
  5. 必要書類を集める
  6. 給与計算に反映する

保険手続きは、会社の形態や従業員の働き方によって必要な内容が変わります。自己判断で進めるよりも、採用前に一度整理しておくと安心です。

社会保険労務士事務所ウィズテラスでは、はじめての雇用に必要な労働保険・社会保険の手続き、雇用契約書、入社手続きの流れづくりまで、会社の状況に合わせてサポートしています。

関連記事