「日本版DBSという言葉は聞くけれど、うちの施設も対象になるの?」
「採用時に確認するだけでいいの?」
「就業規則は、どこを変えればいい?」
子どもに関わる事業を運営している方にとって、早めに確認しておきたい制度が始まります。
2026年(令和8年)12月25日、「こども性暴力防止法」が施行されます。 対象となる事業者には、性犯罪歴の確認に加え、研修、相談体制、被害が疑われる場合の対応、情報管理などが求められます。
子どもが安心して過ごせる場所を守るために、事業者が今から準備したいことを整理します。
1.こども性暴力防止法とは?
学校や保育所など、子どもに教育・保育等を提供する場で、従事者による性暴力を防ぐための法律です。2024年6月に成立・公布されました。今回の対応は、成立した法律の施行に向けたものです。
正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。
「日本版DBS」として性犯罪歴の確認が注目されていますが、前科を確認するだけで制度対応が完了するわけではありません。 日頃の予防と早期発見、被害を受けた子どもの保護・支援まで、組織として取り組む仕組みです。
2.学校・保育所・塾など、対象事業者は2つに分かれます
本制度には、法律により措置が義務付けられる事業と、申請して国の認定を受けることで対象になる事業があります。
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| 区分 | 主な事業の例 | 制度上の位置付け |
|---|---|---|
| 義務対象の事業 | 幼稚園・小中高校などの学校、認可保育所、認定こども園、児童養護施設、児童館、指定を受けた児童発達支援・放課後等デイサービスなど | 対象事業者に法に基づく措置が義務付けられます |
| 申請により認定を受けられる事業(取得は任意) | 認可外保育施設、放課後児童クラブ、要件を満たす学習塾・スポーツクラブ・ダンススクールなど | 対象要件を満たす事業者が申請し、国の認定を受けると、法に基づく措置が必要になります |
例えば、放課後等デイサービスと放課後児童クラブでは、区分が異なります。 名称が似ていても、根拠法令や事業内容を確認する必要があります。
上の表は代表例です。学習塾や習い事教室も、名称だけで認定対象になるとは限りません。事業形態や提供内容を、公式資料の対象要件と照合しましょう。また、認定を受けていないことが、子どもを守る取組をしなくてよいという意味ではありません。
まず押さえたい、対象事業者が行うこと
性犯罪歴の確認だけでなく、日常の予防・相談・被害発生時の対応まで含めて取り組む制度です。主な対応を、準備と運用に分けて整理します。
制度開始前に整えること
- 対象業務・対象者を整理する: どの業務・職員が犯罪事実確認の対象になるかを明確にし、職員へ制度を周知する。
- 禁止行為と対応ルールを文書にする: 性暴力等・不適切な行為の範囲、報告先、事実確認や被害児童の保護・支援の手順を定める。
- 採用書類・就業規則等を点検する: 確認手続や採用条件との整合を確認し、懲戒に備える場合は就業規則に懲戒事由・種類を定めて周知する。
- 相談・研修・情報管理の体制を整える: 内部・外部の相談先、職員研修、犯罪事実確認に関する情報の管理規程・責任者・取扱者等を準備する。
制度開始後も実施・継続すること
- 犯罪事実確認を行う: 採用・配置や定期確認など、法令の対象・期限に沿って確認する。
- 日常的な予防を続ける: 子どもの状況を把握し、面談等で早期発見に努め、相談対応・職員研修・ルールの周知を行う。
- 疑い・おそれを把握したら対応する: 必要な事実確認と子どもの保護・支援を行い、性暴力のおそれがある場合には対象業務に従事させない等の防止措置を講じる。
- 確認情報を厳格に管理する: 閲覧者や保管方法を限定し、法令に沿った廃棄・消去、漏えい等があった場合の報告などを行う。
義務対象事業者は施行に向けて準備が必要です。認定対象事業者は認定取得に向けて体制を整え、認定後は必要な措置を実施します。「準備」と書かれているから任意という意味ではありません。一方、既存の規程・体制で要件を満たしている部分まで、一律に作り直す必要はありません。犯罪事実確認には対象者ごとの期限があるため、詳しくは第4章もご確認ください。
Q.民間のダンススクールや習い事教室も対象ですか?
はい。ダンススクールも「民間教育事業」として、認定を申請できる場合があります。ただし、子ども向けの教室ならすべて該当するわけではありません。次の要件をすべて満たすかを確認します。
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| 確認項目 | ダンススクールなどでの考え方 |
|---|---|
| 子どもに技術や知識を教えている | キッズクラスなどで、実際に子どもへ指導している |
| 標準的な修業期間が6か月以上 | 6か月以上にわたる活動で、同じ子どもが複数回参加できる |
| 対面で指導している | スタジオなどで直接教える。オンラインのみの事業は対象外 |
| 事業者が用意・指定した場所で教える | 事業者が手配したレンタルスタジオなども含む。子どもの自宅は除く |
| 指導する人が3人以上いる | 受付などを含めた職員の総数ではなく、実際に教える人の人数 |
「6か月以上」は、生徒一人ひとりに6か月契約を求めるという意味ではありません。活動の継続性や、同じ子どもが繰り返し参加できる仕組みで確認します。
また、これは「民間教育事業」の要件です。認可外保育施設や放課後児童クラブなど、別の事業区分にこの人数・期間の基準をそのまま当てはめるものではありません。
Q.講師3人が、毎回そろっている必要はありますか?
いいえ。3人が曜日ごとに交代して教える場合も、人数の要件を満たします。同一事業を複数の教室で運営する場合は、各教室に3人ずつ配置する必要もありません。
例えば、代表者自身も指導し、ほかに講師が2人いるスクールであれば、人数の要件は満たすと考えられます。一方、指導者が事業全体で1~2人だけなら、この「民間教育事業」の人数要件は満たしません。受付担当者は、実際に指導していなければ人数に含めません。
「対象になりそうな業種か」だけでなく、実際の運営内容で判断することが大切です。 個別の該当性は、公式資料やこども家庭庁の案内で確認しましょう。
Q.そもそも「認定」とは? 取得は義務ですか?
認定とは、事業者がこども家庭庁へ事業ごとに申請し、性暴力防止の取組や犯罪歴情報の適切な管理を行う体制などについて審査を受ける仕組みです。ダンス指導の資格や、教室を開業するための許可とは別のものです。
ダンススクールなどの認定対象事業では、認定を申請するかどうかは任意です。ただし、認定を受けた後は、法律に沿った対応が必要になります。
「認定対象」と書かれているからといって、すべての教室が施行日から一律に犯罪事実確認を義務付けられるわけではありません。
Q.任意なのに、なぜ認定を取るのでしょうか?
一つの意味は、子どもを守るための取組を、保護者に分かりやすく伝えられることです。
認定された事業者は、こども家庭庁のウェブサイトで公表され、認定事業者マークを広告などに表示できるようになります。保護者が教室を選ぶ際に、法に沿った対策に取り組む事業者かどうかを確認する材料になります。
教室側にとっても、指導内容や料金に加えて、子どもの安全を守る運営体制を伝えることにつながります。その意味で、認定は取組をアピールする手段にもなります。
一方で、認定は宣伝のためのマークだけを取得する制度ではありません。対象従事者の特定性犯罪前科の確認、研修、相談体制、情報管理などを継続して行う責任を伴います。
「認定を受けている=絶対に被害が起きない」という保証ではなく、認定を受けていないことだけで「危険な教室」と判断することも適切ではありません。 大切なのは、認定の有無だけでなく、実際にどのような安全対策を行っているかです。
認定を検討するときは、保護者への伝わり方とともに、自社が必要な対策を続けられる体制を整えられるかも確認しましょう。
認定事業者マークを認定事業者以外が使うことや、法定事業者マークを法定事業者以外が使うことは、法律等で禁止されており、違反には罰則等があります。表示できる範囲も確認しましょう。
認定を検討するときに確認しておきたい費用・時期
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| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請の開始 | 2026年12月25日(施行日)から。それ以前は申請できません |
| 審査の目安 | 1~2か月程度。書類の不備を訂正する期間は含みません |
| 認定申請の手数料 | 1事業につき3万円。事業者単位・事業所単位ではありません |
| 申請方法 | GビズIDを取得し、こども性暴力防止法関連システム(こまもろうシステム)からオンラインで申請します |
| 犯罪事実確認の手数料 | 犯罪事実確認そのものに手数料はかかりません |
同じ事業を複数の教室で運営する場合、教室ごとに3万円がかかるわけではありません。異なる事業を申請する場合は、事業ごとに手数料が必要です。国・地方公共団体等には手数料が免除される場合があります。
手続の手数料とは別に、研修や情報管理などの運用体制は必要です。申請までに、誰が準備と継続的な対応を担当するかを整理しておきましょう。
3.確認の対象は、正社員だけではありません
対象事業者で教員や保育士などの対象業務に従事する人は、パート・アルバイトも含めて確認対象となります。
一方、事務職員、調理員、送迎バスの運転手などは、職名だけで判断せず、実際の業務を確認します。判断の軸は、子どもに対して指導するなどの立場にあるか、継続的に接するか、第三者の目が届かない状況で接する機会が生じ得るか、という「支配性・継続性・閉鎖性」です。
雇用契約の有無だけで対象外にはできません。 派遣・業務委託等についても、対象業務に該当するかの確認が必要です。対象となる派遣労働者の犯罪事実確認は、派遣先が行います。
まずは職員一覧に、担当業務、子どもとの接し方、雇用・契約形態を書き出してみましょう。
4.性犯罪歴は、誰が・いつ確認する?
法に基づく性犯罪歴の確認を「犯罪事実確認」といいます。申請するのは事業者ですが、戸籍情報等は本人がこども家庭庁へ提出します。 国への照会を事業者が直接行うのではなく、こども家庭庁が法務省に照会する仕組みです。
手続きは「誰が・どこへ・何をする」?
こまもろうシステムを使う基本的な流れは、次のとおりです。
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| 段階 | 誰が | どこへ・何をする |
|---|---|---|
| ① 事業者の利用準備 | 事業者 | GビズIDを取得し、こまもろうシステムの事業者アカウントを準備する。認定対象事業者が犯罪事実確認を行えるのは、認定を受けた後 |
| ② 本人を登録 | 事業者 | システムに対象者の氏名・メールアドレス等を登録する。本人にアカウント登録の案内が届く |
| ③ 本人の利用準備 | 対象の職員・内定者本人 | 案内に沿って本人用アカウントを作り、本人確認を行う |
| ④ 申請情報・書類を提出 | 事業者と本人それぞれ | 事業者は従事予定日等の情報や雇用契約書・内定通知書等を登録。本人は戸籍情報等を、システムを通じてこども家庭庁へ提出する |
| ⑤ 国が照会 | こども家庭庁・法務省 | こども家庭庁が法務省に照会し、法務省から回答を受ける |
| ⑥ 確認結果を受け取る | 事業者 | こども家庭庁が交付する犯罪事実確認書で結果を確認し、その結果を踏まえて必要な対応を行う |
本人が戸籍情報等を提出する相手は、勤務先ではなく、こども家庭庁です。 必要書類は国籍等によって異なります。提出方法の詳細は、公式のシステム操作案内等で確認してください。
また、特定性犯罪事実が確認された場合は、事業者への結果交付に先立ち、まず本人へ通知され、誤りがあれば訂正を求める機会が設けられます。直ちに勤務先へ結果が伝わる、という流れではありません。
本人の申告や誓約書は採用段階の準備に役立ちますが、それだけで法定の犯罪事実確認を済ませたことにはなりません。
確認対象は、法律で定める特定性犯罪の前科です。子どもに対する犯罪だけでなく、成人に対するものも含まれます。確認の対象となる期間は、刑の種類などによって異なります。
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| 刑の種類 | 確認対象となる期間の基本 |
|---|---|
| 拘禁刑(下記の全部執行猶予を除く) | 刑の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から20年を経過していないもの |
| 拘禁刑の全部執行猶予(取消しがない場合) | 判決が確定した日から10年を経過していないもの |
| 罰金刑 | 刑の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から10年を経過していないもの |
※執行中などのものや、法改正前の懲役・禁錮も対象に含まれます。期間の起算日や執行猶予の取扱いは、公式ガイドラインで確認してください。
確認のタイミング
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| 対象者 | 確認時期の基本 |
|---|---|
| 新たに対象業務に就く人 | 原則として、対象業務に従事する前に確認します |
| 施行時に在籍する義務対象事業者の現職者 | 施行から3年以内、2029年(令和11年)12月24日までに確認します。国の分散申請の案内に従って進めます |
| 認定時に在籍する認定事業者の現職者 | 原則として、認定から1年以内に確認します |
| 確認後も引き続き対象業務に従事する人 | 法令に従い、5年ごとの再確認が必要です |
※「5年ごと」の正確な期限は、直近の確認日の翌日から5年を経過する日の属する年度の末日までです。現職者には、施行・認定前に対象業務への従事が内定・内示されている人が含まれる場合もあります。
急な欠員でも、確認前に自由に任せられるわけではありません
急な欠員などのやむを得ない事情があり、直ちに従事させなければ事業に著しい支障が生じる場合には、「いとま特例」が認められることがあります。この場合も、従事開始から原則3か月以内(法令で定める一部の場合は6か月以内)に確認が必要です。
確認が終わるまでは、法の安全確保措置の適用上、その人を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じます。原則として子どもと一対一にさせないことに加え、特例の趣旨・必要な措置等の研修と、管理職による定期的な巡回・声掛け等も必要です。
これは確認前の安全確保のための取扱いで、本人に前科があると認定するものではありません。特例の利用条件や一対一対応の例外には細かな要件があるため、事業者の都合だけで確認を後回しにしないようにしましょう。
本人の手続も、早めに案内を
準備ガイドでは、従事者へマイナンバーカードの準備を依頼することが案内されています。公式Q&Aは、システムのアカウント取得時の本人確認を「マイナンバーカード等」としているため、カードを持っていない場合も含め、最新の手続案内で必要書類・確認方法を確かめましょう。職員への事前説明に組み込んでおくと、手続の遅れを防ぎやすくなります。
現職者の確認に猶予があっても、研修や相談体制などの準備まで3年待てるわけではありません。 施行までの準備と、施行後の確認手続を分けて計画しましょう。
5.「前科なし」の確認後も、日常の予防が必要です
前科がないことは、その後の性暴力が起きないことの保証ではありません。子どもが話しやすい環境と、周囲が異変に気づける仕組みを整えることが大切です。
対象事業者は、次のような取組を準備します。
- 研修: 対象従事者が、性暴力の防止や相談を受けたときの対応を学ぶ。
- 内部の相談体制: 事業者内で相談員を選任するか、相談窓口を設け、子どもや保護者に相談方法を周知する。
- 外部相談窓口の周知: 児童対象性暴力等について相談できる外部の窓口も案内する。内部の相談先だけでは足りません。
- 早期把握: 日々の見守りや面談・アンケートなど、年齢や特性に合った方法を用意する。
- 報告・対応ルール: 疑いを把握したとき、誰に報告し、誰が安全確保や関係機関との連携を担うかを決める。
- 保護・支援: 被害を受けた子どもの安全と意向に配慮し、必要な支援につなげる。
相談先は、子どもが複数の選択肢から選べることが大切です。国や自治体が設けている相談窓口も、子どもの年齢や特性に合った方法で伝えましょう。
研修は、こども家庭庁の教材を活用できます。義務対象事業者の現職者は原則として施行前に、新たに対象業務に就く人は業務に入る前に受講する必要があります。認定を申請する事業者では、既に従事している人の研修も申請前に整えます。座学と演習を含め、現場でどう対応するかまで確認しましょう。
- 標準動画:約90分。 国の教材を利用する場合は、原則としてこちらを受講します。
- 要点動画:約17分。 不定期・短期間で従事する人など、標準研修を直ちに受講することが困難な人向けです。誰でも短い方を選べるという意味ではありません。
国の教材と同等の内容・水準を満たす独自研修による対応も可能です。動画の視聴だけで済ませず、必要な演習も含めて計画してください。
6.SNS・写真撮影などの「不適切な行為」もルールに
性暴力を未然に防ぐためには、その手前にある行為への対応も必要です。義務対象事業者向けの準備ガイドでは、「不適切な行為」を定めて周知することが、施行までに最低限実施すべき事項として示されています。
例えば、子どもとの私的なSNS連絡、私用端末による業務外目的の撮影、業務と関係のない二人きりの面会、必要性のない身体接触などについて、現場のルールを整理します。
ただし、教育・保育・介助に必要な対応まで一律に禁止すると、現場が過度に萎縮しかねません。子どもの年齢や特性、支援内容に応じて、必要な関わり方と、認められない行為の境界を職員と共有することが重要です。
例えば、連絡は事業所の公式アカウントを使う、撮影機器と画像の保存先を決める、個別対応の場所や記録方法を定める、といった具体化が考えられます。
7.採用書類と就業規則は、セットで見直しましょう
労務管理では、採用前の説明と、入職後のルールがつながっていることが大切です。
「就業規則」と「マニュアル」は、役割を分けて整備します
禁止行為や日常の対応手順は、就業規則だけでなく、内部規程・マニュアル等で具体化することもできます。例えば、子どもとの私的なSNS連絡の禁止、相談・報告先、疑いを把握したときの対応手順などです。内容を文書で明確にし、研修等を通じて職員に周知する必要があります。
一方、職員への懲戒処分に備えるには、あらかじめ「就業規則」に懲戒事由と懲戒の種類を定め、職員へ周知する必要があります。 「違反したら処分します」と掲示したり、マニュアルで知らせたりするだけで代わりになるものではありません。
整理すると、「具体的な行動・対応手順は規程やマニュアルに」「懲戒の根拠・種類は就業規則に」という役割分担です。掲示は周知方法の一つですが、必要な規程の整備や研修まで不要になるわけではありません。
既存の就業規則等ですでに必要な内容が定められている場合は、その内容を点検し、不足する部分を見直します。規定があっても、個別の懲戒処分が当然に有効になるわけではない点は、第8章で説明します。
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| 見直すもの | 確認する内容 |
|---|---|
| 募集要項・求人票 | 対象業務では犯罪事実確認を行うこと、特定性犯罪前科がないことを採用条件として示すことなど |
| 誓約書・内定通知書 | 内定前に特定性犯罪前科の有無を明示的に確認する方法、重要な経歴の詐称に関する内定取消事由など |
| 就業規則・服務規律 | 対象業務の範囲、性暴力等や不適切な行為の禁止、報告義務、確認手続への協力、懲戒事由・種類、試用期間中の解約事由など |
| 情報管理規程 | 責任者、閲覧権限、保管・廃棄、漏えい時の対応など |
こども家庭庁は、募集要項、誓約書、内定通知書、就業規則などの参考例を公開しています。自社の事業内容や雇用契約と整合するように調整して使いましょう。
前科の確認は、本制度の対象業務と法令上の範囲を踏まえて行います。一般の採用で、すべての応募者に無制限の犯罪歴申告を求める趣旨ではありません。
8.「前科があれば、すぐ解雇できる」ではありません
犯罪事実確認で特定性犯罪事実該当者と分かった場合は、子どもへの性暴力のおそれがあるとの判断の下、対象業務に従事させないための措置が必要です。
現職者については、子どもと接しない業務への変更、従事場所の見直し、配置転換などを検討します。その際も、職種を限定する雇用契約などの内容を確認する必要があります。
防止措置の義務があることと、解雇・内定取消しが有効になることは別の問題です。 労働関係法令に沿った判断が必要で、就業規則に記載すれば自動的に処分が認められるわけではありません。
被害の申出や疑いを把握したときは、子どもの安全確保を優先しつつ、事実確認と職員への対応を適切に進めます。具体的な処分や紛争対応は、事案に応じて弁護士等とも連携しましょう。
9.確認結果の取扱いにも、厳格なルールが必要です
性犯罪歴などの情報を、職員全員に共有したり、通常の人事フォルダへ無造作に保存したりする運用は避けなければなりません。
取扱担当者を必要最小限に限定し、目的外利用や第三者提供を防ぎます。情報管理規程に沿って、閲覧権限、端末の管理、保存・廃棄、漏えい時の報告まで決めておきます。
こまもろうシステム以外への記録・保存は極力控えることが案内されています。「前科がない」という結果も含め、確認に関する情報を適切に管理しましょう。
情報管理規程は、作成だけでなく国への提出も必要です
民間の対象事業者は、1人目の従事者の犯罪事実確認までに、情報管理規程を国へ提出する必要があります(規則第12条第4項。国公立はこの提出義務の対象外)。原則として、こまもろうシステムを通じてオンラインで提出します。
規程が法令に違反すると認められた場合は、是正のための措置が命じられ、必要な措置を講じたと認められるまで犯罪事実確認書の交付が留保されます(法第35条第3項)。
こども家庭庁は、取扱者が1人か複数か、システム外にも記録・保存するかに応じて、3種類のひな型を公開しています。自社の運用に合うものを選び、内容を整えましょう。
漏えい時の報告と責任も確認しましょう
確認で得た性犯罪歴をみだりに他人へ知らせるなどした場合は、法に基づく刑事罰や、民事上の損害賠償請求の対象となり得ます。
漏えい等の重大な事態を把握した場合は、直ちにこども家庭庁へ報告する必要があります。 場合によっては個人情報保護委員会への報告も必要です。担当者が不在でも初動が止まらないよう、連絡先と報告手順を決めておきましょう。
必要な対応をしなかったらどうなる?
犯罪事実確認、研修、相談体制などの必要な措置を実施していない場合は、国や所轄庁による指導・監督の対象になります。ただし、事業者の区分や違反の内容によって、その後の対応は異なります。
- 義務対象事業者: 犯罪事実確認の義務に違反した場合は、法に基づき事業者名等が公表されます。また、情報管理に関する一定の違反には是正命令の仕組みがあります。研修や相談体制などの安全確保措置についても、事業ごとの所管法令等に基づく指導・監督を受けます。
- 認定事業者: 必要な体制・措置が認定基準を満たさなくなれば、基準に適合するための命令や認定取消しの対象となります。犯罪事実確認の義務違反や命令違反は、法律上、認定等を取り消す事由とされており、取消しの事実も公表されます。
- 刑事罰の対象になる行為もあります: 法に基づく報告徴収への不応答・虚偽報告、立入検査の拒否、帳簿の不備、確認記録の廃棄・消去義務違反、確認情報をみだりに他人へ知らせる行為などには、罰則が設けられています。
すべての未対応に直ちに罰金が科されるわけではありませんが、「罰則が直接ないから対応しなくてもよい」という意味ではありません。 また、「就業規則を改訂しなかったら一律にこの法律の罰則が適用される」という整理ではなく、必要な措置を実施できているか、既存の規程に不足がないかを確認することが大切です。
10.施行前に確認したい準備チェックリスト
- 自社の事業が、義務対象・認定対象・対象外のいずれに該当するか確認した。
- 認定対象の場合は、取得の意義・費用・申請時期と取得後の対応を整理し、申請するか検討した。
- 子どもに関わる職種・業務を整理し、対象従事者の範囲を決めた。
- 制度の開始と、職員が対応する手続・研修について説明した。
- マイナンバーカードの準備案内を含め、本人確認・必要書類の最新の手続を職員に案内した。
- 現場の意見を踏まえ、不適切な行為の範囲と対応ルールを決めた。
- 募集要項、誓約書、内定通知書、就業規則を見直した。
- 内部の相談員・相談窓口と外部相談窓口を周知し、報告先や被害が疑われる場合の対応体制を整えた。
- 研修の計画と受講状況の管理方法を決めた。
- 情報管理規程を整え、担当者と閲覧権限、漏えい時の報告手順を決めた。
- 情報管理規程の提出が必要な場合、1人目の犯罪事実確認までに提出する予定を組んだ。
- こまもろうシステムの登録案内と、犯罪事実確認の実施時期を確認した。
2026年10月23日には、「義務事業者用準備ガイド Ver.1.2」が公表されています。義務対象事業者は、施行までに必要な対応の確認に活用できます。
まとめ|子どもを守る仕組みを、日々の運営に組み込む
2026年12月25日の施行に向けて、対象事業者には、犯罪事実確認の準備と日常の安全確保の両方が求められます。
採用書類を1枚追加するだけでなく、職員の研修、相談・報告の流れ、就業規則、情報管理をつなげて整えることが大切です。
まずは「自社のどの事業・業務が対象になるか」と「施行までに誰が何を準備するか」から、具体的に整理していきましょう。
ウィズテラスへのご相談
採用書類や就業規則の見直し、職員への周知など、労務管理上の準備を自社に合わせて整理したい場合はご相談ください。
※本記事は2026年10月28日時点のこども家庭庁公表資料等をもとに作成しています。対象範囲や手続の詳細は、最新のガイドライン・Q&A・所管行政庁の案内をご確認ください。
参考資料
- こども家庭庁:制度の公式ページ
- こども家庭庁:施行ガイドライン(2026年9月改訂)
- こども家庭庁:義務事業者用準備ガイド Ver.1.2(2026年10月23日)
- こども家庭庁:Q&A(2026年9月29日更新)
- こども家庭庁:各種ひな型・参考例
- 『月刊社労士』2026年10月号「こども性暴力防止法(日本版DBS)の施行に向けて」誌面6〜11ページ(提供PDFの8〜13枚目)。