2028年4月1日から、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。
「また会社の負担が増えるの?」「ストレスチェック会社と契約しないといけない?」「産業医がいない会社はどうすればいい?」と感じる小規模事業者も多いのではないでしょうか。
国が用意している無料のツールや支援機関を活用すれば、費用を抑えて制度を導入できる可能性があります。ただし、すべてを無料で完結できるわけではありません。
この記事の結論
「無料でできるところ」と「専門職への依頼や社内対応が必要なところ」を分けて考えることが、低コストで導入するポイントです。
ストレスチェックは必ず有料サービスを契約する必要がある?
ストレスチェックを実施するために、必ずしも民間の有料ストレスチェックサービスを契約しなければならないわけではありません。
厚生労働省は、労働安全衛生法に基づく制度に対応した「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で提供しています。
無料プログラムの主な機能
- ストレスチェックの受検
- 57項目・23項目の調査票への対応
- 個人結果の出力
- 設定した判定基準に基づく高ストレス者の自動判定
- 集団ごとの集計・分析と結果出力
- 受検状況の管理
つまり、ストレスチェックのシステム利用料をかけずに実施する選択肢があります。
一方で、プログラムの設置・設定、対象者情報の登録、受検案内、結果の保存やアクセス管理などは、事業場側で運用する必要があります。無料なのはプログラムの利用であり、制度運用に必要な作業まで自動的になくなるわけではありません。
産保センターでは無料相談・導入支援が受けられる
各都道府県に設置されている「産業保健総合支援センター(産保センター)」では、ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策について、相談対応や事業場への訪問による制度導入支援などを無料で提供しています。
「何から準備すればよいか分からない」「自社に合う実施体制を整理したい」という段階で、まず利用を検討したい公的支援です。
地産保で高ストレス者への医師面接を無料で利用できる
ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、医師による面接指導が必要と実施者が認めた労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。
労働者数50人未満の事業場では、「地域産業保健センター(地産保)」に依頼することで、高ストレス者への医師の面接指導などの産業保健サービスを無料で受けられます。
利用前に確認したいこと
事前申込みが必要です。また、企業規模、地域、申込時期、対応可能な日時などにより利用条件が異なる場合があります。誰でも無制限に利用できる制度ではないため、事業場所在地を担当する地産保へ早めに確認しましょう。
重要|ストレスチェックの「実施者」は別途必要
ここが、無料ツールと公的支援を活用するときの重要な注意点です。
地産保では、ストレスチェックそのものを実施していません。また、地産保の登録産業医にストレスチェックの「実施者」を依頼することもできません。
法定ストレスチェックでは、医師・保健師、または一定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師から「実施者」を選任する必要があります。
社内に該当する専門職がいない場合は、外部機関の活用を検討することになります。実施者業務だけを受託するか、実施事務やデータ保管等と一体の契約になるかは、外部機関によって異なるため、委託範囲と料金を確認しましょう。
無料プログラム 導入相談産保センターの
無料支援 医師面接地産保を
条件に応じて利用 別途必要実施者の確保と
社内運用
どこまで無料?どこに費用がかかる?
低コストで対応する方法を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 低コストで対応する方法 |
|---|---|
| ストレスチェックシステム | 厚労省版プログラムを利用 無料 |
| 制度導入の相談・支援 | 産保センターを利用 無料 |
| 高ストレス者への医師面接 | 地産保を利用 条件により無料 |
| ストレスチェックの実施者 | 別途確保が必要 |
| 社内運用・案内・個人情報管理 | 会社で対応、または外部専門家へ依頼 |
※無料支援の利用条件や対応範囲は、各窓口へ事前にご確認ください。外部機関へ委託する費用は、実施者、実施事務、システム、データ保管、面接指導等の契約範囲によって異なります。
結局、費用がかかる可能性がある部分
主に、実施者の確保、受検案内・データ取込み等の実施事務、個人結果の保存・セキュリティ、地産保を利用しない場合の医師面接、制度全体を外部へ任せる場合の運用支援です。
「無料だから簡単」とは限りません
無料プログラムを利用する場合でも、会社側には次のような準備と運用が必要です。
- 対象者と実施時期を決める
- 実施者と実施事務従事者を選任する
- 社内ルールを整え、従業員へ説明する
- 個人結果を適切に保存・管理する
- 高ストレス者への申出窓口と対応方法を決める
- 必要に応じて医師の面接指導へつなげる
有料サービスを利用するか、無料ツールを自社運用するかは、システム料金だけでなく、社内で確保できる人員・時間・情報管理体制も含めて判断することが大切です。
導入方法を決める前に確認したいこと
見積りや運用方法を比較するときは、次の点を確認しておくと、自社で行う部分と外部へ依頼する部分を整理しやすくなります。
- 実施者業務だけを依頼できるか、実施事務との一体契約か
- 10人・20人程度の事業場で必要になる作業量
- 無料プログラムを運用できるパソコン環境と担当者がいるか
- 個人結果の保存先とアクセス権限をどうするか
- 地産保への申込みを誰が、いつ行うか
- 自社対応と外注で、費用と担当者の負担がどう変わるか
今後、有識者へのヒアリング等で実際の費用相場や小規模事業場の運用例が確認できた場合は、本記事へ随時追記します。
まとめ|無料の部分と、別途必要な部分を切り分ける
50人未満の事業場にストレスチェックが義務化されても、高額な有料サービスを必ず契約しなければならないわけではありません。
厚生労働省の無料プログラム、産保センターの導入支援、地産保の医師面接を活用すれば、費用を抑えて制度を整えられる可能性があります。
一方で、実施者の選任、社内運用、個人情報管理など、無料ツールだけでは完結しない部分があります。
まずは、「誰が実施者になるか」「会社でどこまで運用できるか」「公的支援をどこで使うか」を分けて整理しましょう。
※本記事は2026年8月18日時点の法令・厚生労働省公表資料をもとに作成しています。各支援の利用条件・対応範囲は、申込先へ個別にご確認ください。